特集 第23回日本脳神経外科学会・I
会長演説
高血圧性脳出血外科治療の将来
光野 孝雄
1
1岩手医科大学外科
pp.230
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201797
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文献上にみられる高血圧性脳出血の外科治療はCushing以来60年の歴史を有するが,その成績は悪く,いちじるしい発達をみないままに現在にいたつた。それはその出血の基盤に動脈硬化,高血圧,老令,さらに腎,肝,心臓などの障害,また脳出血自身よりひきおこされた肺合併症や胃腸出血など,外科治療上最悪ともいうべき悪条件をそなえているためであろう。しかし周知のように第2次大戦を契機として世界は大きく変り,外科の領域でも麻酔,術前術後の管理は長足の進歩をとげた,この変つてきた,また変りつつある医学を背景にして,この高血圧性脳出血治療の困難性をあらためて考えなおせばこれを克服できるであろうと信ずるが,これが私どもの本研究の出発点である。
脳軟化,脳膜出血を含め,私どもが診療した高血圧を伴ういわゆる脳卒中急性例は96例であるが,そのうち手術した脳内出血は43例である。これらは一,二の症例を除いてほとんど全例が,従来の姑息的治療法で絶望とされた症例であつたが,そのうちの24例,56%を軽快させ,そのなかには復職したものもある。重症度がやや低く,比較的重症といつた程度の脳出血では内包を避けた出血が多いので,精神機能はもちろん,術後麻痺の回復も劇的で,社会復帰の点から手術はきわめて有効である。今後における脳出血手術の対象としては,ある一定の某準のもとに選択された最重症型の脳出血とともに,只今述べた比較的重症型が広く,routineに手術されるようになろう。
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