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肝疾患で血清GOTが上昇することが有名になつているが,実は中枢神経系は肝より濃厚にGOTをもつし,その濃度は心筋に匹敵するといわれるから,中枢神経疾患では髄液GOTが増加するとおもわれる。著者らは対照として♀18,♂14名の精神病者(その髄液GOTは正常である)をおき,多発硬化症(43名),Parkinonism (19),多発神経炎(26),頸椎spondylosis (32),運動ニューロン障害(11),脳血管障害(8),デメンチア(23),てんかん(23),小発作(8),脳腫瘍(35)など計273例の中枢神経疾患髄液をしらべた。対照は14.9±6.3(5-26) Sigma-Frankel units,これより有意に高いのは急性脳血管障害21.7±10.1(8-35),脳腫瘍20.1±9.0(8-39)で,他は有意差ではなかつた。脳腫瘍は手術的に確かめられ組織像が明らかにされているが,ghoblastoma (11例)がGOT値高く,ghobl.を除外すると他の脳腫瘍では対照と有意差がない。このgliobl.のうち半数に中心壊死があつた。特発てんかんは有意差がなこいが,痙攣発作48時間以内なら有意に高い。血管障害では発作後7日以内に高く,それ以後は対照と有意差なし。髄液GOTと蛋白量とは相関なし。以上各疾患でGOTが高くなる理由として,1)脳血液関門不全による血清からの移入たとえば痙攣発作による脳hypoxiaのごとき,2)細胞からの流出増加,たとえば腫瘍における壊死のごとき,3)髄液からの除去の障害,4)以上各因子の組みあわせ,などが考えられる。今回の成績は腫瘍,てんかん,血管障害などいずれも,脳のrela—tiveあるいはabsoluteのhypoxiaによると解しうるであろう。
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