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排尿失神はGastaut (Rev. NeuroL., 95:547,1956)の記載にはじまり,充満した膀胱が空虚になるので副交感系が緊張する(Gastaut),一種のorthostatic hypotensionである(Way—ne, 1961), Valsalva操作と同機序である(Proudfit, 1959),頸洞反射(Prozan, 1961)などの諸説がある。しかしいずれも確実でない。著者例は38才男,1944年海兵隊にあつた当時から排尿失神がおこり,2年後第2回,さらに2年後第3回発作を経験した。いずれも夜間数時間眠つて排尿にでたときに起こつた。その後もこうした発作あり,日中におこつたこともある。全身にtingling感,ついで30秒ほど意識を失うことがある。akinetic epilepsyと診断されhydantoin剤を与えられたことがあるが,無効。脱糞では失神せず。精神病専門家の精査で神経系に異常なし。血液・尿化学正常,頭部レ線正常,腎盂造影正常,ECG正常。resting EEG正常。過呼吸で一過性にdiffuse slow breakdownあり。臥位・直立位でValsalvaおよび頸動脈洞をマッサージしても血圧・脈拍に著変なし。排尿をはじめると,わずか27cc排出したときすでに蒼白となりI'm going outと叫んだ。血圧低下しはじめ脈圧狭くなる。やがて脈拍27となり,P. R間隔O.22秒2:1心ブロック,収縮期血圧60mmHg以下となる。ついに失神す。臥床して数秒で意識同復す。不髄意運動を伴わず。2:1ブロックは18秒つづき正常化した。それでこの失神はvasovagal syncopeに似ている。venous tone, Venous returnの低下が重要なひとつの機序であろうと思われるが,さらに総末梢抵抗減弱もまた重要な因子と考えられる。
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