Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.緒言
従来耳鼻および心疾患に起因する脳膿瘍はかなり報告されているが,それ以外の乳児期における,いわゆる特発性脳膿瘍は稀で,特に1年未満のものはきわめて少なく,本邦では昭和15年渡辺以来7例の報告があるのみである。Nestadt (1960)は10年間に乳児ならびに幼児の脳膿瘍35例を経験したが,この内乳児は5例のみであつたといい,さらに生後1ヵ月以内の脳膿瘍はきわめて稀で,But—ler (1957)は自験2例を報告したが文献上4例を集めえたにすぎないという。われわれは生後3日目に発病したと思われる2ヵ月の乳児で原発巣不明の脳膿瘍に対し,開頭手術を行ない軽快せしめた1例を経験した。一方脳水腫の治療は最近比較的良好な成績を得ている脳室心耳吻合術も Pu—denzら(1955)によつて考案されたが,その治療の困難性をいまだに残しており,ひいては脳水腫を治療せずに放置する傾向がないとはいえない現状である。このような意味において,われわれの経験した1例は脳水腫を思わせるものの中に,はつきりした治療の施される乳児脳膿瘍もあることを示す興味ある症例であるので,その大要を報告し,あわせて乳児脳膿瘍につき2,3考察を加えたいと思う。
A case (male) of spontaneous brain abscess in suckling, who was guessed to three days after born, and was mistaken as hydrocephalus for two months prior to admission of our cli-nic, was reported.
It was emphasized that brain abscess and many other kinds of curable diseases were included in the patients who were considered as hydrocphalus. A review of cases of spon-taneous brain obscess in suckling under one year of age, as reported in the literature, was presented in detail.
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.