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内頸動脈2例,内水頭4例,前頭蓋窩髄膜腫1例,蝶形洞粘液嚢胞1例(以上はレ線学的に脳腫瘍像あり)。第3脳室腫瘍4例,視束交叉グリオーマ1例,左大脳半球動静脈奇型1例(以上はレ線学的に下垂体腫?所見なし)に,著明な視床下部下垂体性の内分泌症状が見られた。各症例くわしいが,略述すると次のごとくである。動脈瘤の1例はgona—dotrophin正常,無月経。手術により急速に月経発来。BMR低,I131摂取低,コレステロル高く,TSH分泌障害像は手術によつて回復。他の1例はgonadotropin不全。 ACTH不全が明かだが, TSH不全は明瞭でない。頸動脈クランプで脳症状は去つたが副腎不全去らず。第3脳室腫瘍4例では尿崩症が顕著で診断された。何れもgonadotropin不全があったが,ACTH不全ははつきりしない。3例にTSH不全あり。レ線感受性はあつたが,内分泌症状は改善しなかつた。内水頭症(Sylvius水道閉塞)4例には,視床下部下垂体系の内分泌症状なしに,性成熟遅延(3例),性早熟(1例)が見えた。前者のような視床下部症状は文献にも報告あり。早熟はふつう第3脳室後床・乳頭体附近の腫瘍に多いので,本例のごときはきわめて稀。視束交叉グリオーマ1例はすべての下垂体機能障害つよく,照射効なくリプレースメントを行つた。左半球動静脈奇型は13才で蜘網膜下出血を招く前に思春期に達したが,TSH.ACTH.GTH不全あり,骨発育遅れていた(左脳室外壁の大きな血管か)。前頭蓋窩床の髄膜腫は視床下部圧迫によると思われるGTH不全著明。手術後全快。蝶形洞粘液嚢胞1例は手術前,下垂体腫瘍と思われたが,無月経が唯一の内分泌症状であつた。誘導によつて月経発来した。視床下部傷害によつたものか下垂体障害によつたか区別できなかつたが,GTH不全はないらしかつた。傷害部位と内分泌症状とを関連させる興味ある症例というべきである。
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