Japanese
English
特集 脳の生理
〔1〕辺縁系と運動—特に解剖学的関係
THE ANATOMICAL RELATION BETWEEN LIMBIC SYSTEM AND ACTIVITY
小池上 春芳
1
Haruyoshi Koikegami
1
1新潟大学医学部解剖
1Dept. of Anatomy, Niigata Univ. School of Medicine
pp.541-549
発行日 1962年7月1日
Published Date 1962/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201277
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はじめに
われわれの教室で動物の行動にいくぶん関係があると考えられる運動的現象を最初に観察したのは,猫30匹犬2匹を使つて梨状葉皮質および扁桃核部を電気的,化学的に刺激した時のものである(高橋清)。その際,眼瞼,眼球,瞬膜,耳介の運動や咀嚼運動などの起こるのが見られた。これらの運動が最も著明に起こるところは組織学的にみるとArea periamygdalaris interrnedia (RoseのPam2)からその外側へかけての皮質部であつた(第1図)。その際Marchi染色,Bodian染色などで線維関係を調べ,前交連,分界条にも変性が多少みられたが,固有扁桃核の部で多くのneuronはいつたん終つているものであるという結論になつた。
その後主として扁桃核に関する自律神経系への影響の実験をし,さらに中隔部や海馬,帯状回などの実験へ移つていつたのであるが,その間種々の動物の運動への影響をみたことがある。しかし特別に動物の行動そのものを日標にして研究したことはなく,今回behaviorの問題について解剖学的なことを話せといわれたが,解剖学的にbe—haviorを論ずることはたいへん難かしいことである。辺縁系の解剖関係では特に線維連絡関係が重要なものと思うが,われわれは以前から辺縁系では特に亜核関係や内部構造の部位的差を調べており,最近になつてオスローのKaada教授の教室や,アメリカのWood, Baldwinらの研究では,運動関係でもある程度の局在があることが指摘されているので,今回はわれわれが前から考えていた機能的局在の問題を主として論じてみることとする。
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