Japanese
English
綜説
関門の臨床
Clinical Problem of Barrier
相沢 豊三
1
,
塚部 祥生
1
Toyozo Aizawa
1
,
Yoshio Tsukabe
1
1慶応大学医学部
1Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.373-384
発行日 1958年6月1日
Published Date 1958/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200675
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1.関門の定義及び歴史的考察
結核性髄膜炎の治療は種々の抗生剤の出現と共に,まずそれらの薬物の髄液内直接注入によつて劃期的治療成績を収めた。しかし,その後ストレプトマイシン,パス,ヒドラジツト等の内服もしくは筋注による全身的投与でよくその効を奏することが判明し,現在では多く全身的投与の方法がとられている。この治療面での変遷の理論的根拠は,一つにはこれから述べんとする関門の理論によるのである。即ち健康人では全身的にストレプトマイシン等を投与してもその薬剤は殆んど髄液内,或いは脳内に移行しないが1),一旦髄膜炎に罹患するとその移行度は極めて上昇しよく治療効果を治め得るのである。
換言するならば健康人に於いてストレプトマイシンに限らず,電解質,コロイド,生体色素,重複合分子等の多くの物質は,他臓器には容易に透入されるほどの血中高濃度ですら中枢神経系には殆んど移行が見られない。実際に摘出脳切片で検べてみると脳は活?な代謝を行つているし(全身の22%の酸素消費量),又Kety及びSchmidtのN2O法を用いての検査でも脳は他臓器に比して相当多量の血流量を有している(66cc/min/100gr.brain)2)。
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