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私はさきに原因不明の血小板減少症を伴つた紫斑病の1剖檢例を報告して,同時に文献に見出される類似疾患との比較考察を試みたのであつたが,當時何か釋然たらざる氣持で筆を擱いたのであつた。同論文の末尾に「本例に關しては多くの點で未解決,不文明の點が多い。(中略)主病變を全身の小動脈に有する未知の症例の存在を報告する云々」と述べたが何か文献の見落しがあるのではないかという一抹の不安が,その裏にはあつたのである。その後私はそのような症例の追加報告はないか,また既存の文献を教示して下さる向きはないだろうかと心待ちしつゝ過して來たが.最近たまたまArch. Neur. & Psychiatr. Vol. 63. 1950を通読して,文献の上の私の知識の不足を補うことが出來たので茲にそれを紹介し,併せて私の小論の補遺を行うことにした。
それはMartin A. GreenとSeymour Rosenthal兩氏が1948年3月9日にNew Yorkの神經學會で行つた講演要旨で,「全身性血小板性血栓症に伴つた腦變化」という題が付けられている。その序言をみると,終末血管の血小板性血栓症を伴つた血小板減少症性紫斑病は1925年E. Moschcowitzによつて最初に記載されたという。それ以來今日に至るまで15例の症例報告が發表されている。Moschcowitzの例は特志解剖で部分的な研索に限られて,腦は觀ていないが,同論文に掲載されている心筋の小動脈の病變の寫眞は私の論文中の第5圖に示した腦の小動脹の所見と全く同樣である。すなわち細小動脈の管腔は内皮細胞から生ずる纖維芽細胞によつて滿されている。しかして,Moschcowitzは當時その症例を全く新しい疾患であると斷定したのであつた。
In the Ist volume No.2. of this journal march 1949 a case of thrombocytopenic purpura was reported by the author. The study was con-cerned with the the clinical feanture and the pathological anatomy of the case. In this short article it is pointed out that this case is ideni-tified with those which were reported by Green and Rosenthal in the Archives of Neur. & Psychi atr. (63 Vol. 1950). This disease, described for the first time by Moschcowitz (Arch. Int. med. 36. Vol. 1925), is very rare and this may be probably the first report of it in Japan.
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