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Glioblastoma multiforme (一部には尚おSpongioblastoma multiformeと呼稱されているもの)以下G.m.と略記する--なるGliomaは人體Glioma中最悪性の腫瘍の一つであること,この腫瘍は少年,若年に殆どなく,大部分は40歳前後の成人の大腦皮質下に瀰蔓性に發育し,大腦以外に發することは極めて稀なこと,其の經過は初發症状を見てから平均12ケ月に死亡している程迅速であること,Glioma總数に對し,約1/3-1/4を占むるという,GliomaのうちではAstrocytomaに次ぐ大頻度を有するものであること等が,歐洲でも米國でも認められているのに對し,私は尚お經験總数が極めて少いとはいえ腦腫瘍として100例強,Gliomaのみとしては40例を越えているのに,その1/4どころか1/10にも足らぬ小数しか經験しないこと,又それは腦外科材料として私が稀にしか遭遇しないのみでなく新潟の病理教室の長年の材料中にも私どもの經験した材料以外には存在しないこと,私のみならず京大外科の荒木氏も50餘例のGlioma中に1例の典型的なG.m.も見ていないこと(これは最近再檢索により3-4例のG.m.と云つてよい組織像のものを發見された由訂正されているが)を常に私に語られたこと等から,私は,他にも外國といくつも異つた點のある吾國の腦腫瘍に於て,G.m.も亦外國とその事情を異にする種類の腦腫瘍の一であるという念を深くし,昨年外科學會でその意味のことを話した。
その際の統計材料となつた,私及び荒木氏の腦腫瘍については上述の通りであるが,東大の淸水氏のみはG.m.が49例の分類Glioma中16例も存し,その比率は歐米のG.m.の頻度と全く一致しているのに一驚を喫したのであるが,このG.m.は,必ずしも臨床上,組織學上疑義のないものばかりではない樣子なので不審はあつたのであるがひと先づそのまゝ私と荒木氏のものに加えて計算したのであつた。
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