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ベイリー先生訪問日記
K.S生
pp.69-70
発行日 1948年11月1日
Published Date 1948/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200009
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司令部からの電話で,「ベイリー先生が到着されて待つて居られるから午後5時に帝國ホテルへ行く樣に」との指示を受けたのは8月24日であつた。夢に想ふことすら出來なかつたこの喜びに,胸をときめかせて待つてゐる私の前に現われた舊師は,其の頭髪に少し年をとられた様子が見受けられる外,全く昔のまゝのにこやかな温顔で,手をとつて再會を喜んで下さつた。伺ふところによれば,今回の御來朝は全く陸軍の委囑によるもので,日本政府とは無關係であり,然も非常に短い滞在期間に澤山仕事をすまさなくてはならない御多忙なスケデュールである。私はこの機會を逸してはと,是非一度日本の學者の前に,講演をして下さいとお願ひした。幸ひ司令部の好意ある取計らひにより,許されて9月1日の水曜日に東大でといふ快諾を得た。この様なわけで,日本に於て御講演願へるのはこれ一度であり,これを逃しては先生に接することの出來る機會は二度と廻つて來ないかも知れないといふ大事なものなので,出來る丈け多く,擴く知らせたいといふことで骨を折つた。即ち雜誌腦及神經の發行所である日本醫學雜誌社に依頼して,其全會員又各大學に出來得る限り擴く,早く通知を出す様にして貰つた。若し御通知もれがあつたり後れたりした所があつたら,この様なわけであつたことを御了承御寛容願ひ度い。
さて當日になると,この様な早急な際であつたにもかゝわらず,日本中津々浦々から其道の大家,専門家多數が参集し,會場は文字通り滿員の盛況であつた。
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