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脳・脊髄のMRI画像アトラス
Meningeal Carcinomatosis
Meningeal Carcinomatosis
太田 浩嗣
1
,
厳本 哲矢
1
,
横田 晃
2
1筑豊労災病院脳神経外科
2産業医科大学脳神経外科
pp.544-545
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100505
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症 例 76歳,女性
1986年胃癌のため胃を2/3切除され,経過は良好であった。2002年4月下旬頃より食欲低下,嘔気が出現し会話も乏しくなった。5月6日頃より構音障害と複視を訴え,他院で脳梗塞の治療を受けたが,症状が進行したため13日入院となった。入院時,発熱はなく,傾眠傾向で,項部硬直,左外転神経麻痺を認めた。頭部MRI(図)で,小脳テントと小脳半球上部の脳回がgadolinium造影にて増強されたが,小脳半球には浮腫はなく,meningeal carcinomatosisと診断した。さらに,残胃癌の増大のため胃は閉塞しており,肺,膵臓および肝臓には多発性の転移巣を認め対症療法を行ったが,奏効せず29日死亡した。
コメント
癌患者の増加,長期生存,発見率向上などにより転移性脳腫瘍の発生頻度も増加し,全脳腫瘍の17.6%を占めるようになった。このうち,meningeal carcinomatosisは髄液内あるいは軟髄膜における癌細胞のびまん性増殖で,全転移性脳腫瘍の4%,剖検例の8%に認められる。原発疾患では白血病やリンパ腫などの血液疾患がよく知られているが,胃癌,乳癌,melanomaからの転移も多い。そのほとんどが血行性転移で,choroid plexusや脳表に近い転移巣から髄液腔へ播種する経路をとる。症状としては,(1)頭蓋内圧亢進症状,(2)髄膜刺激症状(10%),(3)脳神経症状(III>VII>VIII)などがあるが,稀に脳血管壁に浸潤して二次的に脳血管を狭窄,閉塞させる場合もある1, 3)。
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