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〈世話人挨拶〉
高木(済生会中央病院) 世話人の1人として開会の挨拶をさせていただきます。この“Neuro CPC”も第3回目を迎えることができましたが,前2回とも各2症例ずつ,臨床と病理から活発なディスカッションがなされました。その記録は,『脳と神経』の“Neurological CPC”に収載されており,記録も残されていることは素晴らしいことではないかと思います。
本日も2症例,済生会中央病院のbrain biopsy症例と,日赤医療センターの剖検例を呈示させていただきます。今回は,画像所見の読みというものが非常に重要であるということで,症例1では,神経放射線のコメンテーターとして荏原病院の井田先生にもお越しいただいておりますので,討論がとても楽しみです。では,皆さんの活発な討論をぜひお願いして,始めさせていただきます。
□症例呈示(表1)
司会(織茂) 症例1は,済生会中央病院神経内科の溝井先生に発表していただきます。この患者さんは,神経学的な症状は多彩ではないのですが,画像が興味深いということで,活発なディスカッションをしていただきたいと思います。
まず症例を呈示していただき,そこで質問を受け,次に画像について話していただき,そこで質問を受けます。その後,皆さんでディスカッションしていただいて,最後に病理に移りたいと思います。
主治医(溝井) 症例は53歳の女性,主訴は右半身のしびれで,現病歴では平成16年3月中旬から,“右半身に紙が1枚張り付いたようなピリピリとしたしびれ感”が出現しました。4月17日から,右顔面のピクつきが出現し,5月には頻度が増加しました。近医を受診し,頭部MRIを施行され,異常所見を指摘されたため5月7日に精査目的で当院を受診し,入院となりました。
入院時,一般身体所見には特記すべき異常はありませんでした。神経学的所見では,入院時の5月7日には,右顔面に痛覚鈍麻がありました。半身の知覚障害はこの時点では確認できていません。右の上肢で回内程度のBarré徴候が陽性の他には,特記すべき異常所見はありませんでした。
検査所見ですが,白血球,ヘモグロビン,血小板など血算には異常なく,凝固系のPT,APTTも正常でした。血液生化学検査では,電解質,腎機能,肝機能と異常なく,CKも正常で,耐糖能も正常,炎症反応も陰性でした。脂質代謝系にも異常はありません。ただ,本質的なことではないのですが,HBs抗原は陽性でした。その他の血液所見の項目として,抗核抗体,抗DNA抗体の両者とも陰性です。血清補体価も正常値で,抗カルジオリピン抗体,PR-3-ANCA,MPO-ANCAとも正常,ACEも正常,SS-A抗体,SS-B抗体も陰性でした。リウマチ因子も陰性で,可溶性IL-2リセプターも正常範囲でした。
髄液所見ですが,無色透明で,初圧,終圧ともに正常範囲,細胞数は3/cmmで,リンパ球3,好中球は0です。蛋白が75mg/dlと上昇していましたが,糖は正常,あとIgG indexも正常で,β2 microglobulinは正常で,oligoclonal bandは陰性でした。Myelin塩基性蛋白は軽度上昇していました。
受診後の経過を図示します(図1)。4月17日ころから,右顔面のピクつきが出現して,高頻度になり,5月7日に入院しています。それに先立って,4月27日に他院でMRIを撮られています。入院当時,右顔面のピクつき,痛覚低下があり,facial spasm様の訴えもあったので,最初はクロナゼパムを使いましたが効果なく,途中でカルバマゼピンに代えています。その結果,右顔面のピクつきには改善傾向がありました。Barré徴候は,これらの薬剤ではあまり変化はありませんでした。
MRIについては,後で井田先生からお話がありますが,いろいろ診断に迷うところがありまして,5月20日に脳生検を施行するに至りました。経過は以上です。
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