動き
「第78回日本小児精神神経学会」印象記
中根 晃
1
1実践女子大学
pp.452
発行日 1998年4月15日
Published Date 1998/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904538
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この学会の印象記が本誌に登場するのは初めてのことであるが,この学会は日本児童青年精神医学会に比べて規模は小さいものの,臨床に密着した演題が多い学会である。今回は静岡大学教育学部の杉山登志郎助教授が会長となって1997年11月22日に静岡県医師会館で開催された。
今回の特別講演は,最近の自閉症研究で話題になっている,セオリー・オブ・マインド研究で活躍中のF. G. Happé女史による「自閉症と心の理論」であった。女史はまだ31歳という若い心理学者で,ロンドン大学付属精神医学研究所に併設されている遺伝・発達研究センターで研究されている。1994年には“Autism:An Introduction to Psychological Theory”という著書を出版されており,すでに邦訳もされている。心の理論とは相手の心がどのようなセオリーで動いているか読み取る能力で,自閉症ではこの能力の発達が著しく遅れているとする考えである。講演は自閉症全般を射程に入れたものであるが,論点はここに集中していた。心の理論の検査には第一次誤信念課題と第二次の誤信念課題があるが,高機能自閉症には両者ともパスする人がいる。Happé女史は高次の心の理論の検査法を開発しており,この所見をもとに自閉症論を展開し,講演ではこれを大脳生理学的に説明するcentral coherenceweaknessの考えをさらに進め,右大脳半球損傷にみられる症状と,自閉症の社会機能の障害およびコミュニケーション機能の障害との対比に言及し,その類似性から自閉症は右半球に関連するのではないかということで結ばれていた。
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