動き
「第13回日本痴呆学会」印象記
井関 栄三
1
1横浜市立大学医学部精神科
pp.334
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903850
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第13回日本痴呆学会は,1994年11月12日に群馬大学医学部神経内科の平井俊策教授を会長として前橋市の群馬県教育会館で開催された。今回は例年と異なり日本老年医学会とは別個に行われ,会長のご厚意で上州の山々の紅葉の美しいこの時期を選んでいただき,教室員の方々のご努力の結果,演題数43というこじんまりした学会ながら熱気あふれる討論が行われた。
本学会の演題内容は痴呆性疾患に関する臨床医学および生物学的研究よりなるが,どちらかというと後者に重点が置かれているように思う。今回もアルツハイマー型痴呆(ATD)に関する病理学・生化学・生理学・分子遺伝学的研究が多く,動物実験モデルを用いた研究が5題,ATD患者の剖検脳,血清,髄液,培養細胞などを用いた研究が17題あった。これらの中にはアミロイドβ蛋白・アミロイド前駆体蛋白・アミロイドP成分などアミロイドに関連したものが9題と多く,またアポリポプロテインEに関するものが3題あるなど,ATDの痴呆発現機序の解明に向けた最近の研究の方向性が現れていた。特にアミロイド前駆体蛋白やアポリポプロテインEの分子遺伝学的手法を用いた疫学調査研究が複数の施設で行われていたのが目を引いた。また進行性核上性麻痺(PSP)とcorticobasal degeneration(CBD),Pick病,レビー小体病など,初老期ないし老年期に発症する変性性痴呆疾患についての症例報告および臨床病理学的研究も9題あった。この他,各々の痴呆性疾患に特有な臨床症状や画像所見からみた臨床的研究が7題,ATD患者の薬物療法に関する研究が5題みられた。
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