右（劣位側）側頭焦点を示し，時間迅速現象を呈したてんかんの1例—発作後プロラクチン濃度上昇にみる側頭葉内側構造の関与

A Case of Distortion of Time Sense with Right (non-dominant) Temporal Focus: The postictal prolactin elevation due to the discharge involving mesial temporal structures

　【抄録】　患者は2年前より時間感覚の変容（時間迅速現象），複雑な幻視，巨視，変形視，未視感，自律神経症状を発作性に体験するようになった42歳の女性。これらの症状は発作間欠期脳波にて右側頭部に限局する突発波を認めたことから精神発作と診断された。これまで時間感覚の変容を発作症状として呈したてんかんの文献例において，脳波図にて発作焦点部位を明示したものはみあたらず，時間感覚の変容（時間迅速現象）の発現機序につき考察を加えた。その結果，時間迅速現象後の血清プロラクチン濃度の上昇と脳波上の焦点部位から，劣位側の側頭葉内側構造を起始部とする発作発射の同側解釈皮質への拡延が想定され，同現象は解釈的錯覚（錯視）と考えられることを論じた。