Japanese
English
研究と報告
側頭葉優位側切除例(てんかん)の1例
A Case of a Unilateral-temporallobectomized (do-minant hemisphere), Epileptic Patient.
山上 竜太郎
1
,
後藤 彰夫
1
,
村瀬 孝雄
1
,
阿部 啓一
2
R. Yamagami
1
,
A. Goto
1
,
T. Murase
1
,
K. Abe
2
1国立国府台病院精神科
2国立国府台病院外科
1Dept. of Psychiatry, Konodai National Hospital.
2Dept. of Surgery, Konodai National Hospital.
pp.141-145
発行日 1966年2月15日
Published Date 1966/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200964
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I.まえがき
側頭葉機能は,大脳生理学,脳外科学的研究,側頭葉腫瘍,側頭葉Pick病などの臨床的研究の進歩とともにしだいに解明されつつあるが,なお精神医学領域において,幾多の未解決の疑問を蔵している分野である。近時側頭葉てんかんの発作焦点が脳波学的にさまざまに検討されるにおよんで,側頭葉機能の重要性がクローズアップされるにいたつた。Bailey1)およびPenfield2)らが,1947年,精神運動発作型てんかんが側頭葉切除術によつて治療されうることを報告して以来,わが国においても追試の数々が報告されている。1953年以来こころみられた両側,および一側の切除例については,佐野9)らが脳外科的見地より報告しており,1958年,精神神経学総会シンポジウムに「側頭葉機能」の問題がさまざまな角度から討議されたことは,いまだわれわれの記憶に新しいところである。側頭葉切除後に見られる残遺症状に関しては長谷川19)がくわしく研究しているが,術後の長期予後に関する資料は必ずしも十分であるとはいえない。それは手術までした患者が,たとえその予後が不良なものがあつても,ふたたび医療を求めて来院しないことによるであろうし,また手術により一応問題になる易怒性,爆発性が消失しその必要がなくなることにもよるであろう。
著者らは術後15年を経過した側頭葉優位側切除例で,なお問題行動があるために精神科に入院中であり,しかも明らかに術後の精神的変化を合併していると考えられるてんかん患者を観察する機会をもつたので報告してみたい。
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