巻頭言
もっと言葉を
飯森 眞喜雄
1
1東京医科大学精神医学教室
pp.118-119
発行日 2002年2月15日
Published Date 2002/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902577
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もう以前からいわれてきたことだが,精神医学と身体医学との差異はますます小さく,また境界も融合しつつある。こうした流れのなかで,我々精神科医は何を得,何を失ったのであろうか。心身二元論から脱却したとか,PsychikerやSomatikerといった呼び名を歴史上の死語としてさえ思い浮かべなくなった,などといったことではない。
昔は精神科といえば,良かれ悪しかれ,孤高を誇る存在であった。だが今では,野に下ったように,「総合病院精神医学」がもてはやされ,身体科と並ぶ時代になった。臨床面では,本来は研究用だったはずのDSMの転用によって身体疾患並みに明快になったし,アルゴリズムによって薬の使い方もスッキリした。リエゾン活動の活発化に伴い身体疾患の病態や症状ばかりでなく,その治療の内容や方法についても知っているようになった。研究面では,生物学的知見と技術の発展によって検査法やアプローチの仕方が身体疾患と同じようになった。さらに,被虐待児童を小児科医と一緒に診たり,がん患者の免疫機能を高めることを考えるなど,従来の○○科という範疇に入らないものもやるようになった。これらの傾向は臓器別講義や診療の導入によってますます加速されていくだろうし,やがてこれまでの精神科とか精神医学という概念自体も変容していくだろう。
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