Japanese
English
研究と報告
自傷を機に精神症状の特異な変遷を呈した妄想性うつ病の1例
A Delusional Depression that Changes the Psychotic Symptoms on the Occasion of Unique Self-Injury
西岡 玄太郎
1
,
三村 將
1
,
佐野 奈々
2
,
秋庭 秀樹
1
,
平井 里江子
1
,
渡辺 壮一郎
1
,
吉邨 善孝
3
,
上島 国利
1
Gentaro NISHIOKA
1
,
Masaru MIMURA
1
,
Nana SANO
2
,
Hideki AKINIWA
1
,
Rieko HIRAI
1
,
Soichiro WATANABE
1
,
Yoshitaka YOSHIMURA
3
,
Kunitoshi KAMIJIMA
1
1昭和大学医学部精神医学教室
2国立病院東京医療センター
3北里大学医学部精神科
1Department of Psychiatry, Showa University, School of Medicine
2National Tokyo Medical Center
3Department of Psychiatry, Kitazato University, School of Medicine
キーワード:
Depression
,
Frontal lobe
,
Delusion
,
Self-injury
,
Suicide
Keyword:
Depression
,
Frontal lobe
,
Delusion
,
Self-injury
,
Suicide
pp.869-873
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902475
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【抄録】 妄想性うつ病の経過中に激しい自傷行為を契機に抑うつ症状の消退と妄想内容の変遷を生じた特異な1例を経験した。症例は74歳,女性。72歳時に,抑うつ感,易疲労感,不眠を呈する単極性うつ病として発症し,いったん寛解した。その後,うつ症状の再燃と,「子宮のあたりがもやもやする」「おなかの中がねじれている」という訴えが出現し,近医婦人科へ連日受診し,膣洗浄を受けていた。婦人科疾患は否定的で,心気妄想と体感異常を伴う,妄想性うつ病と診断した。その後,腹部と頸部を多数刺傷する自殺企図を認めたが,企図後は一貫してその自殺企図を否認し,「外国人に襲われた」という追想的な妄想を生じた。自殺企図を契機に,抑うつ症状,心気妄想,体感異常は消退し,新たな被害妄想へ症状に変遷を来したと考えられた。また,本症例では,経過とともに,前頭葉萎縮の進行を認め,器質的な変化が症状修飾に影響した可能性も考えられた。
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