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精神分裂病者をはじめとする精神障害者の治療も病院内に限定されたものから地域社会での生活を視野に入れた活動へと急速に変わりつつある。すなわち,福祉ホーム,援護寮,授産施設,生活支援センターなどの精神保健福祉法による社会資源も不十分ながら整備されつつある。こうした患者さんの生活と人生の質にも配慮した良質な,適切かつ効率的な精神医療を受けられるよう医師は医師以外の医療・保健の専門家との連携・協調が求められている。しかし現状では問題が山積みしているように思える。
まず大学病院における臨床教育の問題である。私のいる大学病院では,こうしたチーム医療のための研修・教育の現状を考えると気の遠くなるような現実がある。当院では精神医療を専門とする作業療法士,ソーシャルワーカーの定員枠はない(心理士については今年度から臨時職員1名の枠がやっと認められた)。看護婦も院内の業務に専念しており,訪問看護などの活動は困難な状況にある。加えて,先端機能病院であるために,在院日数の短縮が求められている。そのためリハビリテーションを視野に入れた治療計画は立てづらい。建物の構造にも問題がある。チーム医療の基盤になる相互理解は医療保健の専門家が働くスペース,不断の連携を保証する場所が用意されなくてはならないが,現状からは遠い状況にある。さらに,医療機関の機能分化が叫ばれ,進行している現在,大学病院が上記のような機能を持つこと自体が難しい。民間の病院に教育関連病院になってもらいチーム医療や精神科リハビリテーションの現場に触れてもらう努力はしているがそれも限界がある。医学生に対する精神科の臨床教育はこれでいいのかという思いにいつも苛まれている。
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