巻頭言
精神医学・医療と新ミレニアム
前田 潔
1
1神戸大学医学部精神神経科
pp.786-787
発行日 2000年8月15日
Published Date 2000/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902261
- 有料閲覧
- 文献概要
今年および来年は節目の年である。新ミレニアムあるいは新世紀の始まりに合わせるかのように新しい試みがスタートしたし,またあるいはスタートしようとしている。我が国の精神医学・医療においてもさまざまに節目になる年である。まず日本精神神経学会では設立100年を迎える。学会誌は一昨年に100巻を超えた。さらに同学会は,我が国ではむろんアジアでも初の世界精神医学会(WPA)総会を開催しようとしている(開催は2002年)。そのほかに今年4月から介護保険が実施された。また医療法の改正の中で卒後臨床研修の必修化が国会で議決された。
筆者が勤める大学では,卒後臨床研修必修化に伴うスーパーローテートが今年開始された。従来,卒後臨床研修は大学附属病院で行われてきた。厚生省がプライマリーケア医の養成が重要と判断して卒後臨床研修必修化案が出てきた。もう10年近く前からの案である。実現されなかったのは財源問題であるといわれている。臨床研修医の給料が出ないということである。一昨年,全国国立大学医学部長病院長会議では常置委員会が研修実施案を発表した。全国の医科大学および医学部では昨年あるいは今年から,大なり小なりこの案を基本に研修カリキュラムを組んでいると聞いている。国立大学がこのように厚生省の案を先取りする形でスーパーローテートを急ぐのは,厚生省に対して,「大学病院だけでも十分,卒後臨床研修は可能ですよ」ということを示したかったのだと言われている。厚生省は大学病院に若い医者が集まっているのはよいことではないという判断のもと,卒後臨床研修は国公立病院や有力民間病院でも行われるべきであると考えていると伝えられている。
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.