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中山書店刊行による〈講座 精神疾患の臨床〉の第9巻にあたるのが本書『神経発達症群』である。まず注目すべきは,本書が米国精神医学会のDSM-5が提唱し,精神疾患分類の国際基準となるはずの世界保健機関によるICD-11でも採用された神経発達症群(NDDs)という疾患群名を書名とし,ICD-11の疾患分類に準拠して構成しているところである。この書名は従来なら「発達障害」とされたところであろうが,それだとNDDsに含まれる個々の神経発達症(NDD)の影が薄まり,あたかも発達障害という単一疾患であるかのような印象を読者に与えてしまう危険が残ったであろう。本書がそうした発達障害の曖昧さを避け,精神疾患としてのNDDsを前面に押し出したところに評者は児童精神科医として共感を覚える。
本書は総論に続く各論で知的発達症,発達性学習症,自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如多動症(ADHD)の4疾患をそれぞれ章立てしてその諸側面に触れ,最終章に4疾患以外の発達性協調運動症や常同運動症などのNDDと,NDDsに分類されていない排泄症群,反抗挑発症,素行・非社会的行動症,さらにはICD-11では神経系疾患に分類された一次性チック症を関連疾患としてまとめているところに工夫がある。まさにNDDsの手強さは,上記の反抗挑発症や素行・非社会的行動症,そして総論である1章の「神経発達症群における鑑別と併存症」と「adverse childhood experiences(ACEs)の項で扱われている乳幼児期の心的外傷に関連した精神疾患などの併存症が絡みあう入り組んだ状態像をとらえる必要がある点と,そうした個々のケースの全体像に応じた治療を組み立てねばならない点にあるのだから。
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