書評
—福武敏夫 著—神経症状の診かた・考えかた 第3版—General Neurologyのすすめ
尾久 守侑
1
1国立病院機構下総精神医療センター
pp.1063
発行日 2023年7月15日
Published Date 2023/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207040
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本書の初版が出版されたのは2014年の5月で,病棟に出たばかりの研修医1年目だった私はこれを直ちに買って勉強をした。知らないことばかりだった。第2版が出版された2017年には精神科医2年目で,てんかんセンターに勤めていた。当然買って読んだ。知らないことばかりだった。そして第3版の出版された今年2023年はそんな私も医者10年目になった。今回は買わなかった。買う前に医学書院が本を送ってくれたからである。そして読んだ。知らないことばかりだった。
と,書くと何度も読んでいるのにその都度内容を忘れているのかと驚いてしまうが,実際全てを記憶できていない部分はまああるにせよ,そういうことを言いたいわけではない。まず第一に,内容が毎回更新されている。改訂にあたって新しい客観的知見が追記されることはしばしばあることだが,すでに熟達した臨床家である著者の臨床感覚も新鮮に更新されており驚(きょう)愕(がく)する。網羅性が増していること以上に,時を経て複数回テキストを再読し書き直したことによって,1冊を読み通したときにわれわれ読者に憑依する著者の臨床感覚に年輪のような重層性が生まれており,これは並大抵の医学書の改訂では起こり得ない現象だと思う。
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