書評
—福武 敏夫 著—神経症状の診かた・考えかた 第3版—General Neurologyのすすめ
宮岡 等
1
1北里大学・精神医学
pp.1137
発行日 2024年6月10日
Published Date 2024/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229647
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評者は精神科医である.精神科医になって3,4年目のころ,今から約40年も前になるが,身体疾患に起因する意識障害であるせん妄,認知症,統合失調症治療薬による錐体外路症状,心理面の原因で身体症状を呈する転換性障害などに出合って,精神科医もある程度の神経内科(現在の脳神経内科)の知識が不可欠であると考えた.当時の私のバイブルは故・本多虔夫先生が単独執筆された『神経病へのアプローチ』(医学書院)であった.所属教室の主任教授に頼み,週1回程度であったが,しばらくの間,本多先生の下で研修を受け,臨床家はこうあるべきという姿勢も学んだ.
それ以後,自分が精神科教員の立場となり,わかりやすいテキストを探しているなか,みつけたのが本書である.著者は初版の序で「遺伝学や生化学などのいわゆる高度医療の側面には触れていない.それらを高速道路建設に例えると,本書は街中(まちなか)の交通渋滞に対処するものである」,第3版の序では「『街中の交通渋滞対処』が『高速道路建設』に役立つ」,「予断や理屈に捉われないで,患者の症状を観察し,自ら一歩深く考えることが今なお臨床医に求められていると思う」と強調しており,評者が教えられてきた医療観を再確認させられた.
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