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English
紹介
包括システムからR-PASへ—ロールシャッハ・テストの新体系の普及に向けて
From Comprehensive System to Rorschach Performance Assessment System:Implementing a newly developed Rorschach system
井上 直美
1,2
,
水野 雅文
2,3
Naomi Inoue
1,2
,
Masafumi Mizuno
2,3
1帝京平成大学大学院臨床心理学研究科
2東邦大学医学部精神神経医学講座
3東京都立松沢病院
1Graduate School of Clinical Psychology, Teikyo Heisei University, Tokyo, Japan
2Department of Neuropsychiatry, School of Medicine, Toho University
3Tokyo Metropolitan Matsuzawa Hospital
キーワード:
ロールシャッハ・テスト
,
Rorschach Test
,
包括システム
,
Comprehensive System
,
CS
,
Rorschach Performance Assessment System
,
R-PAS
,
精神病状態
,
psychosis
Keyword:
ロールシャッハ・テスト
,
Rorschach Test
,
包括システム
,
Comprehensive System
,
CS
,
Rorschach Performance Assessment System
,
R-PAS
,
精神病状態
,
psychosis
pp.1001-1012
発行日 2021年6月15日
Published Date 2021/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206393
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はじめに
ロールシャッハ・テストは,スイスの精神科医であったHermann Rorschachが1921年にモノグラフ『精神診断学』(“Psychodiagnostik”)1)の刊行とともに発表した10枚の図版刺激から成る心理検査であり,精神科臨床において広く用いられてきた。誕生から100年経った今でも,図版は当時と同じものが使用され続けているが,テストの実施解釈法(“システム”と呼ばれる)に関しては多くの流派が生まれてきた。1974年に5つの体系を統合し,2003年まで改訂が続けられた包括システム(Comprehensive System:CS)2,3)は,異なる実施法の結果を比較可能にした初の統一化されたシステムであり,国際的にも最も使用頻度の高い実施解釈法であった4)。
しかしながら,CSには多くの不備があったため,2011年に米国の研究者Meyerらにより大幅な改良を加えられて作成されたのがRorschach Performance Assessment System(R-PAS)5)である。R-PASは,その後米国以外の国々にも広がり,いまや臨床や研究において用いられるシステムとしてはCSをしのいで主流になりつつある。
本論では,日本ではまだよく知られていない最新のロールシャッハ・システムであるR-PASについて具体的な検査結果の例を示して概説し,特に精神科臨床においてCSの代わりにR-PASを用いることの利点,および導入にあたっての課題を述べる。
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