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京都大学の古川壽亮先生から「医師主導の抗うつ薬の大規模臨床試験」の参加への誘いをいただいたのは2011年秋であった。当時,東京大学精神神経科は笠井清登教授の指導の下,形態MRIや機能的MRI,脳波,脳磁図,近赤外線スペクトロスコピィなどのマルチモダリティに神経心理検査や生化学物質を組み合わせて統合失調症や気分障害,広汎性発達障害の患者の脳基盤研究を行う生物学的研究が中心であり,大規模なRCTに参加する経験に乏しかった。医局員の状況としては大学や関連病院で勤務を行う医師に加えて,上記の生物学的研究で学位を取得した後に精神科クリニックを開業,あるいは研究に従事せずに開業はしたものの臨床研究に参加する機会をうかがっているというresearch mindを持つ若手開業医が十数名いるという状況であった。
筆者は大学院修了後も学内で臨床・研究・教育に従事していたが,上記の若手開業医のほとんどと入局年次が近く密なアクセスを取りやすい状態であった。そこで笠井教授と相談の結果,大学病院がハブとなって臨床研究の実施のための倫理申請や京都大学の中央部門との事務折衝を一手に引き受け,各精神科クリニックで実際の患者さんのリクルートと介入をするという役割分担を行うこととした。SUN☺D試験の元々のスキームと当時の東大精神科の状況がよくマッチした結果であるが,同時に臨床試験の内容としても抗うつ薬のfirst choiceだけでなく,初期治療の効果が不十分の時にsecond choiceをどう行うかというresearch question(clinical question)の設定が実地の臨床家にとっても魅力的であったことが,各開業医のresearch mindを刺激し研究参加への熱意を促すものとなった。
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