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はじめに
精神医療における早期介入は,統合失調症をはじめとする精神病性疾患への早期介入をひとつの端緒として発展してきた。その流れの中で,精神病(psychosis)を顕在発症する前の時期への介入にも関心が注がれるようになり,精神病を発症するリスクが高いと想定される精神状態(at-risk mental state;ARMS)に対しても早期介入が試みられるようになった18)。
ARMSへの早期介入については,賛否両論を含むさまざまな議論が繰り返されてきた。特に,米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)1)の診断カテゴリーとしてARMSの一部である減弱精神病症候群(attenuated psychosis syndrome;APS)を新たに正式採用するか否かについては,白熱した議論が展開された2,5)。結果的に,DSM-5ではAPSの正式採用は見送られ,Ⅲ部の新しい尺度とモデルの項目に「今後の研究のための病態」のひとつとして掲載され,統合失調症スペクトラムおよび他の精神病性障害群の中の「他の特定される統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害」の例のひとつとして挙げられるにとどまった。
一方,ARMSについての過去20年に及ぶ臨床研究の成果として,ARMSの臨床的な特徴,同定や介入の方法に関するエビデンスが蓄積されてきた。最近では重要なメタ解析がいくつか報告されてきており,ARMSについて一定のコンセンサスも形成されつつある状況にある。
そこで本稿では,ARMSにおいて論点となるいくつかのポイントを整理し,さらに英国と欧州の最新のガイドラインを紹介することでARMSへの早期介入を検討してみたい。
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