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抄録
認知機能障害は統合失調症患者における中核症状である。これらの障害は統合失調症の遺伝基盤を理解するための効果的なツールになり得る。本研究は,認知機能障害に関わる遺伝子多型が統合失調症の病態に関わる機能的な遺伝子ネットワークに集積しているかを検討した。まず,411名の健常者を対象に統合失調症と関連する52種類の認知機能の全ゲノム関連解析(GWAS)を行った。続いて,257名の統合失調症患者を用いて,GWAS結果の再現を試み,それらの結果のメタ解析を行った。単一の遺伝子や遺伝子多型よりもむしろ遺伝子ネットワークのほうが統合失調症の脆弱性に強く関連しているかもしれないので,再現できた遺伝子多型周辺に存在する遺伝子の遺伝子ネットワーク解析を行った。GWASでは,p<1.0×10-4の緩い統計学的閾値にて認知機能と関連する3,054個の遺伝子多型を見出した。3,054個の遺伝子多型の中で,191個の遺伝子多型は統合失調症においても認知機能と関連していた(p<0.05)。しかし,メタ解析では,ゲノムワイド有意水準を満たす遺伝子多型を見出すことはできなかった(p>5.0×10-8)。再現できた191個の遺伝子多型の中で115個は,遺伝子多型から10kb以内に遺伝子が存在した(60.2%)。これらの遺伝子多型はp=2.50×10-5からp=9.40×10-8の範囲の中程度の統計学的水準で認知機能と関連していた。再現遺伝子多型から10kb以内に存在する遺伝子は,グルタミン酸受容体活性(FDR q=4.49×10-17)と主要組織適合抗原複合体クラスIに関連する免疫系ネットワーク(FDR q=8.76×10-11)に有意に集約された。本研究の結果は,統合失調症における認知機能障害に関連する遺伝子多型がNMDA型グルタミン酸受容体ネットワークと関連することを示した。
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