書評
—加藤 敏 監修,阿部隆明,小林聡幸,塩田勝利 編集—症例に学ぶ精神科診断・治療・対応
小林 隆児
1
1西南学院大学人間科学部社会福祉学科
pp.889
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205011
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精神疾患の国際診断基準が本格的にわが国に導入されてから,すでに35年が経過した。今や心情的に古典的分類を手放せないでいる臨床医はごく少数派となっているのではないか。論文はもちろんのこと,教科書であれ公的文書であれ,それが標準仕様となった。しかし,行動科学に裏打ちされた国際診断基準は,症状をみてもこころをみない臨床医を確実に増やしている。自然科学に倣った「科学的エヴィデンス」を武器に脳科学の進歩は目覚ましく,薬物療法の隆盛をもたらし,その一方で精神療法の存在は影が薄い。
本書は編者らの「精神疾患に対する繊細な病態理解が浅薄になった現状を憂い,患者の置かれた社会的文脈やパーソナリティなどに十分注意を払った繊細な病態理解,それに基づいたしなやかな治療」が今だからこそ求められているという強い思いによって生まれたものである。
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