Japanese
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特集 統合失調症の認知機能障害の臨床的意義
統合失調症の認知機能障害の神経生物学的背景
Neurobiology of Cognitive Deficits in Schizophrenia
兼子 幸一
1
Koichi KANEKO
1
1鳥取大学医学部脳神経医科学講座精神行動医学分野
1Division of Neuropsychiatry, Department of Brain and Neuroscience, Tottori University Faculty of Medicine, Yonago, Japan
キーワード:
Schizophrenia
,
Cognitive impairment
,
Cognitive remediation therapy
,
Prefrontal cortex
,
Distributed network
Keyword:
Schizophrenia
,
Cognitive impairment
,
Cognitive remediation therapy
,
Prefrontal cortex
,
Distributed network
pp.743-752
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204988
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はじめに
近年,神経認知機能の障害が統合失調症の社会機能の長期的転帰の決定要因の一つであることが明らかになり,社会機能の改善を目指す流れの中,その治療に関心が集まっている。神経認知機能障害は,精神症状,特に陽性症状との関係は乏しく,この事実から推定される通り,抗精神病薬による改善効果は小さい。そのため,神経認知機能障害を標的とする薬物や心理社会的治療法の開発が急がれている。心理社会的治療法である認知矯正療法(cognitive remediation therapy;CRT—他の呼称もあるが,本稿ではCRTに統一)がもたらす認知機能の改善効果は,最近のメタ解析では,全般的認知機能に対する効果サイズ0.45と中等度の有効性が示された26)。現在,多様な理論や方法に基づくCRTが実践されているが,有効性の差はそれほど大きくない。認知機能障害の生物学的成因は不明の点が多いが,新たな知見を取り入れた仮説が提唱されている。また,認知機能の改善効果の評価法で十分な検証に耐えるものは少なく,脳機能に対する効果検討は,主に神経機能画像を用いて評価され始めたところである。しかし,得られた知見を障害の成因仮説と併せて検討することは,CRTの効果検討だけでなく,手法自体の改善に役立つ貴重なデータとなり得る。本稿では,まず統合失調症の認知機能障害の生物学的成因に関する仮説を概観し,次にCRTがもたらす生物学的効果に関する知見を紹介する。なお,認知機能は,神経認知機能と,他者の意図・感情の理解に必要な社会認知機能に大別されるが,本稿では特別に言及する以外,認知機能とは神経認知機能を指す。
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