Japanese
English
研究と報告
転換型ヒステリーとコタール症候群を呈した初老期うつ病の1例
A Case of Presenile Depression with Conversion Disorder and Cotard's Syndrome
江頭 和道
1
,
一井 貞明
1
,
阿部 和彦
1
Kazumichi Egashira
1
,
Sadaaki Ichii
1
,
Kazuhiko Abe
1
1産業医科大学精神医学教室
1Department of Psychiatry, University of Occupational and Environmental Health
キーワード:
Cotard's syndrome
,
Depression
,
Hysteria
,
Delusion of negation
,
Conversion disorder
Keyword:
Cotard's syndrome
,
Depression
,
Hysteria
,
Delusion of negation
,
Conversion disorder
pp.1047-1053
発行日 1989年10月15日
Published Date 1989/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204783
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抄録 高度の疲弊の後の抑うつ状態から,転換型ヒステリー発作およびコタール症候群へ発展した初老期女性の1例を示した。コタール症候群の症状としては,自傷・自殺の明らかな徴候を確認できなかった他は,うつ病性不安,神に呪われたという妄想,痛覚脱失,否定観念群,不死妄想を認めた。この中で否定観念群は,ヒステリー性の自己催眠状態において出現した。ヒステリー症状,不死妄想,拒食・拒薬が,主に精神療法的接近により消失した後には,抑うつ状態が前面に現れた。この抑うつ状態には,マプロチリンと炭酸リチウムによる薬物療法が奏効し,寛解に至った。本症例の発症機転として,ヒステリー症状とコタール症候群が,うつ病性の亜昏迷状態を共通の基盤として生起し,潜在的な脳器質性要因は亜昏迷状態を強める形で関与する可能性があると推定した。
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