巻頭言
疾病遺伝子はこわくない
中澤 恒幸
1,2
1東京都済生会中央病院
2長谷川病院
pp.1060-1061
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204590
- 有料閲覧
- 文献概要
この8月ミュンヘンの第16回国際神経精神薬理学会議(CINP)に出席,しばらくぶりに原地産の白ソーセージWeissburstとビールの味,そして筆者にとって3つの話題が大変興味深く受けとめられた。第1は精神分裂病の遺伝子研究であり,第2は新しいセロトニン再とり込み抑制剤の展開,そして第3はリカバーのあるモノアミン酸化酵素阻害剤MAO-Ⅰの開発であった。近年遺伝子研究の進歩は目まぐるしく結構なことであるが,疾病の遺伝子の発見となると実に複雑な気持になる。
ミュンヘンのシンポジウムも精神分裂病が主体ではあったが,実際は分裂病者を含む精神病多発家系の研究であって主遺伝子major gene決定ではなくpolygeneであろうと受けとめられた。polygeneならば易罹病性liabiliもy(外部環境への感受性,抵抗性を含む)が問題となろう。一昨年Baron, M. はBiol. Psychiatryに"分裂病者の素質的脆弱性と遺伝子の指標"と題する論文を出し,昨年彼はNature Vol. 326に躁うつ病遺伝子確定としてX染色体上の同病遺伝子を染色体減数分裂時のDNA組み換え頻度と形質発現確率で表現している。研究手技の新しい樹立は,どんな仕事でもこのように一気呵成に論文が出てくるのだろう。
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.