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Ⅲ.感情障害に於けるデキサメサゾン抑制試験(DST)
13.ストレス要因とうつ病に於けるDST
感情障害の発症には,様々な心理的ストレスの関与が指摘されているが,このようなストレス要因とうつ病の生物学的背景との関連性についてはまだ明らかになっていない点が多い。Zimmermanら327)は,130例のうつ病(DSM-Ⅲ)の入院患者に於て“life event”(生活歴)を詳しく聴取し,Axis Ⅳの心理社会的ストレスの強さを調べてDSTの結果との関連性を調べたところ,Axis Ⅳの得点が高いほど,即ち発症前の心理社会的ストレスが強いほどDSTの異常反応の比率が低かったと報告している。またSashidharanら273)は,DSTの抑制不全群と抑制反応群の間で,病相期間の長さと病前のlife eventの重篤度を比較検討したところ,DSTの抑制不全群の方が病相期間が有意に短く,病前のlife eventが重度の傾向を示したと報告している。一方Dolanら103)は,72例のうつ病患者に於てlife eventの重篤度とDSTの結果の関連性を調べたところ,両者の間に関連性はなかったが,尿中のfree cortisol値はlife eventの大きい患者でより高値を示したと報告している。
さて,Coccaroら77)は,既に発症したうつ病患者のDSTに及ぼす心理的ストレスの影響を研究している。即ち彼らは,大うつ病(RDC)の患者41例とその他の精神障害の患者40例を対象として入院後2〜6日以内にDSTを施行したところ,入院後2日以内にDSTを行った大うつ病の患者は,入院後3〜6日後にDSTを行った大うつ病やその他の精神障害(DSTの時期は問わず)よりもDSTで抑制不全を示す比率が高かったと報告している。彼らによればこの結果は,大うつ病の患者が入院に伴う心理的,生理的ストレスに対して敏感であることを示唆すると同時に,DSTの有用性はその施行期間の妥当性と密接に関連することを示唆しているという。
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