Japanese
English
研究と報告
ガンゼル症候群を示した9歳女児例
A Case of Nine-Year-Old Girl with Ganser Syndrome
野本 文幸
1
,
横田 正夫
1
,
高橋 隆一
1
,
奥寺 崇
1
,
中屋 みな子
1
Fumiyuki Nomoto
1
,
Masao Yokota
1
,
Ryuichi Takahashi
1
,
Takashi Okudera
1
,
Minako Nakaya
1
1群馬大学医学部神経精神医学教室
1Department of Neuropsychiatry, Gunma University School of Medicine
キーワード:
Hysteria
,
Ganser's syndrome
,
Childhood
,
Dissociative type
,
Conversion type
Keyword:
Hysteria
,
Ganser's syndrome
,
Childhood
,
Dissociative type
,
Conversion type
pp.293-299
発行日 1987年3月15日
Published Date 1987/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204302
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
抄録 今回筆者らは小児期には稀であるガンゼル症候群を示した解離ヒステリーの9歳女児例を経験した。本例では準備状態に骨端症が,症状悪化に薬物性肝障害がそれぞれ深く関与し,それまで「自分は何でもできる」という自我像をもっていた患児が生まれて初めての深刻な挫折を体験する背景となった。そして,患児の年齢では本来できないことになっていたのを無理を通してやらせてもらった"役"を遂行できなかったという失敗が結実因子となり,優等生であった患児の立場,自我像を根本的に揺るがせて人格的危機に陥し入れ,極期には解離ヒステリーの病像を呈した。この状態においてVorbeiredenとVorbeischreibenを示し,また抗不安薬の離脱症状と考えられるけいれん発作を起こし,その前後から病状が快方に向かった。治癒過程において患児は自ら絵画を描き始めるが,この描画が一度は崩壊してしまった自我像を再構築するための重要な治療的役割を果たしたと考えられた。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.