Japanese
English
短報
バルプロ酸の短期記憶機能に及ぼす影響について—Sternbergの課題を用いて
Short-term Memory Functioning and Valproate
中込 和幸
1
,
永久保 昇治
1
,
福田 正人
1
,
斎藤 治
1
,
亀山 知道
1
,
平松 謙一
1
,
安西 信雄
1
,
丹羽 真一
1
,
伊藤 憲治
2
Kazuyuki Nakagome
1
,
Shoji Nagakubo
1
,
Masato Fukuda
1
,
Osamu Saitoh
1
,
Tomomichi Kameyama
1
,
Ken-Ichi Hiramatsu
1
,
Nobuo Anzai
1
,
Shin-Ichi Niwa
1
,
Kenji Itoh
2
1東京大学医学部精神医学教室
2東京大学医学部音声言語医学研究施設
1Department of Neuropsychiatry, University of Tokyo Faculty of Medicine
2Research Institute of Logopedics and Phoniatrics, University of Tokyo Faculty of Medicine
pp.209-211
発行日 1987年2月15日
Published Date 1987/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204291
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I.はじめに
我々は先にSternbergの課題を用いてバルプロ酸(VPA)単剤を服用中のてんかん患者と正常者で短期記憶機能を比較し,てんかん患者において正反応時間の延長を認めたが,短期記憶検索速度については差を認めなかったことを報告した1)。そこで今回,てんかん患者のVPA服用量を高用量と低用量に違えて2回実験を行い,課題遂行成績,正反応時間および短期記憶検索速度に対するVPAの影響を検討した。
Sternberg(1966)の課題では,被験者はまず,提示される短い項目を記憶する(memory set)。次に,続いて提示される1個の刺激(probe)が記憶した項目の中にあるか否かをできるだけ速く,正確に判断し反応することを要求される。通常,刺激としては0から9までの数字が,反応の指標としては正反応に対する反応時間が用いられる。Sternberg(1966)によれば,memory set sizeの増大に応じて反応時間が直線的に延長することから短期記憶の検索速度を求めることができる2)。
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