特集 老年精神医学
巻頭言
老年精神医学をめぐって
後藤 彰夫
1
1葛飾橋病院
pp.4
発行日 1987年1月15日
Published Date 1987/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204266
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老年期の精神障害ならびにその周辺の問題は,古くは痴呆を中心に限られた関心を寄せられていたが,老年人口の増加に伴い関心の範囲も広く深くなってきた。それにつれて,とくに近年関連論文の数の増加も顕著で,専門誌の特集もみられるようになった。精神症状について言えば,痴呆問題の深化とともに老人の性格変化や生き方の問題が老齢化社会の到来とともに今後ますます注目されるであろうし,生物学的知見の集積とともに薬物治療の再検討も必要になるであろう。治療面では,さらに,他にさまざまの身体疾患をもつ老人にかかわるリエゾン精神医学は臨床医共通の問題となるし,これらの老人をいかに支えるか残存機能の保持強化のためのリハビリテーション医学もさらに注目される必要がある。癌などではすでに現実の問題として関心を集めている老年精神障害者のターミナルケアも老人の注目するところとなるであろう。これらの老年精神障害者個々の治療・処遇を広くつつんだ現実的課題として,老人病院,精神病院内の老人病棟,特養施設などにおける運営の問題があり,最近老人保健法案の国会審議も新聞紙上で毎日のように報ぜられている。
これらの認識に立って本誌では新しく「老年精神医学特集」を企画することになった。この領域の業績について,過去,現在,将来を広く展望し,最新の知見を紹介するとともに今後の問題点を先取りしようと試みた。
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