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精神科診療所が地域精神医療の中核をなすべきであるという考えは,精神病院中心主義への批判から必然的に出てくる結論である筈のところ,現実には金沢学会(昭和44年)でそうした批判が出された時点では,受皿としての診療所の数さえはっきりしていなかった。しかし昭和45年1月には,本誌で"精神科診療所をめぐる諸問題"の特集が組まれている。多少官製的構成は免がれなかったが,話題提供者が現場の経験者のため,ディスカッションは極めて現実的で多彩であった。これが1つの刺激になったのか各地に医会が出来,昭和49年12月に第1回の全国集会が持たれ,50年6月第2回総会が開かれ,正式に日本精神神経科診療所医会(以下日精診)と称し,毎年6月に総会を持つことになった。第4回から地方持ち廻りとなり,総会を運営できる力のある地区が選ばれて,大阪,兵庫,広島,九州,愛知,神奈川,北海道などで総会が持たれ,間で東京,大阪が中継するなどして,昭和60年度は第12回総会が札幌市で開かれた。発足当時約170名の会員は60年10月1日現在で概ね400名である。会は定款に従って運営され,年2回の医会誌を発刊,6回の日精診ニュースを発行して,会員間の資質の向上と親睦を図り,昭和54年以降国立精神衛生研究所が厚生省から受けている地域精神医療の研究の1つの班に加えられて,研究助成費をもらっている。日精診という呼称もある程度精神医療関係者には認知されてきていると思っている。冒頭に述べたようなテーゼには余りに時間が経ちすぎたためか,あるいはなお日精診の会員数からしてマイノリティなのか,精神科診療所中心主義というアピールは出て来ないで,外来中心主義というかなり,概念的な表現に置きかえられている。そして現実には精神病院入院中心主義が存続している。ある面では国際的な色彩をおびて,国の外と内から批判が出て,精神衛生法をゆさぶっているが,果してどこまで患者側に理解を寄せられるか,私達は公平な立場から期待を持つものである。その中で地域の中で生活を普通に生きていけるような基本理念が貫かれることを特に希望する。
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