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特集 少年非行の心理と病理—東京都精神医学総合研究所 第11回シンポジウムから
少年非行と精神医学—対策と治療
Juvenile Delinquency and Psychiatry: Social policy and treatment
石川 義博
1
Yoshihiro Ishikawa
1
1(財)東京都精神医学総合研究所
1Psychiatric Research Institute of Tokyo
pp.1051-1064
発行日 1983年10月15日
Published Date 1983/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203655
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I.非行少年対策における歴史と現状
1.刑罰から科学的処遇へ
現在,大きな関心をひいている少年非行は,古くから人間の社会にとって大変深刻な問題であった。それはおそらく人類が社会を組織し,行動の規範を定め,その枠の中で子孫の繁栄を考えはじめて以来の問題であったと思われる。すでに6,000年前,エジプトにその記録が残されており54),2,500年前Socratesは「青年は権威を軽蔑し,両親や目上の人を敬わず,教師に対して暴君のようである」と嘆いている77)。わが国でも江戸時代中期に林子平が同様の苦言を呈している80)。このように青少年の非行,中でも親や教師に代表される権威や社会秩序に対する反抗は,いずれの時代にも大人や社会にとって大きな脅威であった。
それだけに青少年非行に対する社会の対応は,はなはだ厳しいものであった。たとえば約4,000年前,Hammurabi法典は第195条に,「もし息子が彼の父を殴打するならぽ,息子の両手を切断する」と規定していた16)。このように殺人には死刑を,犯罪には相応の厳罰を,という「応報思想」20,46,111)は,非行少年に対しても苛酷な刑罰を要求した。犯罪に対する罰は正義であり,刑罰は重いほど矯正効果や犯罪予防効果をもつと考えられたからである。罰としては施設への生命をも脅かすほどの厳格な取り扱いが集団的,画一的に行われていた45)。当時は非行少年も成人犯罪者と一緒に扱われていた。
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