特集 精神医学における病態モデル
巻頭言
「精神医学における病態モデル」特集号発刊にあたって
高橋 良
1
1長崎大学精神神経科
pp.222-223
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203547
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- 文献概要
精神疾患の成因解明や治療法開発に病態モデルを用いてきた歴史は決して新しいものではなく,古くはメスカリン中毒の研究や,ブルボカプニン・カタレプシーの研究にその草創期をみることができる。第二次大戦後,精神薬理学の発達につれ,動物行動を指標にした数多くの向精神薬のスクリーニング法が考案されているが,それらも症状レベルの動物モデルとみなすことができる。このような流れのなかで,明確な目的意識をもって,精神科疾患の動物モデルを作成し,各種の力法で研究する機運が熟し,今日,数多くのモデルが提案されている。
我が国でも本特集の筆者達によって,夫々の病態モデルが作成され,研究されているが,その成果がこのような形でまとめられたのは,我が国の精神医学界では初めてのことであろう。欧米では既にいくつかのシンポジウムがひらかれ,単行本として出版され,精神神経科における各種のモデルが論じられている。本特集では病態モデルの意義と種々相が総論として述べられたあと,躁病をのぞく精神科の主要病態モデルがくわしく述べられ,この分野の我が国の研究レベルの高いことがよく示されている。精神医学におけるモデルの意義については以下の各論文で種々論じられているが,なかでも本体不明の機能性精神病の動物モデルの妥当性は状態像の相似性から出発し,そのモデルの科学的研究によって得られた仮説を本来の機能性精神病をもつ病者について検証できれば十分である。それによって推論ではなく,裏づけのある精神病の本体の仮説が提出されることになろう。
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