特集 リチウムの臨床と基礎—最近の話題
巻頭言
リチウム特集号発刊にあたって
高橋 良
1
1長崎大学医学部精神神経科
pp.120-121
発行日 1982年2月15日
Published Date 1982/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203374
- 有料閲覧
- 文献概要
本号はリチウム療法の臨床と基礎についての特集号であるが,昭和56年4月12日に開催された日本リチウム研究会第1回集会の招待講演者の発表と参加者の討論をまとめたものである。真の意味のリチウム療法の開拓者といえるデンマーク,オーフス大学精神科,生物学的精神医学教授であるM. Schou教授が来日し,公開講演をされた翌日,教授をまじえて,リチウム研究者約50名が1日間,一堂に会し,最近の問題点に焦点をあてながら充分発表,討論しえたことは,リチウム療法が躁うつ病の治療と予防に不可欠なものとなっている今日,極めて有意義であった。更にリチウムの内科疾患の若干のものへ治療的応用の可能性が生じてきたことも発表され,その作用機序の解明は副作用の防止とともに躁うつ病の本態解明への足がかりを与えてくれるように思われた。
本特集号では以下の表題にみられるように,リチウム療法の躁うつ病における現在の位置づけと広く精神神経疾患におけるその役割から始まり,臨床上重要な問題である副作用,中毒の諸問題をへて基礎的研究に至るリチウムのほぼすべての領域を網羅しているといえよう。リチウムは優れた不可欠の躁うつ病治療薬であるが,本剤の最大の特徴は精神医学における本格的な最初の予防薬として実証されたことであろう。疾病の原因を根治しうる一次的予防薬とはいえないにしても,服用持続によっていかに多くの躁うつ病者が社会的にほぼ完全に機能できる利益を享受しているかは日常診療で経験していることでもあり,以下の論文でその科学的所見が充分論じられている。
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.