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1981年の今年もまもなく終りに近づきつつあるが,今年は我が国にとっても精神医学に関連して,実に多くの国際学会や国際交流活動があったと思われる。この傾向は近年ますます,つよまっているが,特に今年度,強い感想をもったのは我が国において,大きな関連国際学会が東京における7月の薬理学会を皮切りに,9月には脳波・臨床神経生理学会議,てんかん学会,神経学会が京都で継続して行なわれたことが一因であるが,これらに関係してサテライトシンポジウムが日本国内各地で開催されたことも関心をよぶものであった。更にリチウム療法の第一人者であるデンマークのM. Schou教授の来日講演とリチウム研究会が4月に,米国精神医学学会のDSM-Ⅲ作成委員会責任者,Dr. R. L. Spitzer博士の来日講演とこれをめぐるシンポジウムが10月末から11月初めにかけて行なわれ,10月末には第3回日本生物学的精神医学研究会の学術集会に非定型精神病の臨床生物学の著名な精神医学者が欧米から多数参加したことも特記すべきことであった。国外においては6月末にストックホルムで生物学的精神医学連合の第3回国際会議が行なわれ,メンバー学会である日本の研究会からも多数の会員が参加発表した。また9月初あにマカオにおいて第3回国際社会精神医学会アジア版として比較文化精神医学会が行なわれ,WHOの招待で筆者も参加することができた。他方,国際精神神経薬理学会(CINP)のアジア版が10月初めに香港で行なわれ,世界精神医学連合(WPA)のアメリカ地域会議が10月末から11月初めにかけてニューヨークで開催され,我が国からも参加者があった。この他にも国際精神分析学会やアルコール学会などが海外で行なわれ,日本精神病院協会主催の海外精神医療施設や政策の研修視察も行なわれたと伺っている。医学の中でも最も国際交流が難しいと考えられてきた精神医学の領域で,これ程までに活発な学術交流が行なわれるようになったことは昔日を知る者にとっては驚きでさえある。
このようにある種の進歩といえる段階になったのは世界を狭くした社会経済的変化が一因をなしていることは疑いないが,それとともに各国の精神医学を同一のテーブルにのせて,共通の言葉で語り,開発途上国も工業先進国も含めて精神障害の治療改善と精神保健の増進を目標に活動している世界保健機関WHO精神衛生部の長年の努力やWPA及び世界精神衛生連盟の各種活動に深く負っていることに注意せざるを得ない。
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