巻頭言
地域精神衛生体制について
菅又 淳
1
1都立精神衛生センター
pp.2-3
発行日 1980年1月15日
Published Date 1980/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203041
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日本の地域精神衛生制度もできてからすでに14年以上になった。不十分な制度といわれながらもこれだけの年月が経過すれば何とか体をなすもので,精神衛生センターのバックアップのもとに,保健所を第一線機関としての地域精神衛生体制ができ上がってきている。いわば日本独特の体制といえるもので,この基本体系の上に今後何をつけ加えて完全なものに近づけてゆくかが問題と私は考えている。
むろんこの体制が非常によいシステムであると私は思っているわけではない。できればこれと根本的に別な体系であったらよかったと思っているし,現体制の欠点は山積していて,とても満足というところからは程遠いのであるが,この点はここでは取りあげない。ただ先進国の地域精神衛生体制はうまくいっていて,日本だけが駄目だとよくいわれるし,私もよく書いたものであるが,諸外国の実情を具体的にあたってみると,彼らが誇らしげに宣伝しているほど実際はうまくいっているわけではないようである。パリの13区とか,ニューヨークのダッチェスカウンティなどは,パイロットスタディ的に模範的実験が行なわれたもので,それぞれの国で全国津々浦々までこのとおり実施されているわけではないのである。このような先進国でも,地域ケアがまったく施こされてない地区があるはずである。全体としてはわが国の地域精神衛生体制が先進国のそれよりは劣っていることは否定できないが,日本が全然駄目だと自棄的になる必要がないことをこの頃感じているので,まず述べてみたわけである。
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