巻頭言
消されてしまった中精審
秋元 波留夫
1
1国立武蔵療養所
pp.222-224
発行日 1979年3月15日
Published Date 1979/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202901
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中精審(中央精神衛生審議会のこと)といっても,いまの若い世代の精神科医の諸君にはピンとこないかも知れない。しかし本来それはわが国の精神障害(精神衛生法によれば精神疾患だけではなく,てんかん,精神薄弱はもちろんアルコール症,薬物嗜癖,それに神経症まで国民の心身の健康に重大な関係をもつさまざまな障害が含まれる)に関する医療・福祉・世論の啓発などの問題について国の施策を諮問するために厚生大臣によって設置された機構である。だからそれは精神科医の日常の活動にとって好むと好まないとにかかわらず無関係ではあり得ない重要な,用いようによっては精神科医療の発展に役だつ機構なのである。
いま,厚生省が所管しているいわゆる精神衛生関係予算(実際は後述のようにその大部分が医療費だから,精神衛生関係予算と称すのは事実に反する)は850億(昭和53年度)をこえている。この国民の血税がほんとに精神障害の人たちのために役に立つように使われているかどうかを監視し,不届きなことがあればどしどしきびしい批判を加えその改善を要求するのが中精審の使命である。だから,この建前からすれば精神科医療に責任をもつ精神科医は中精審の動向に無関心であり得る筈はない。
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