エトランゼ
黒板は誰が消すのか
常田 正
pp.271
発行日 1987年3月1日
Published Date 1987/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204027
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アメリカの学校の先生は,[授業が終わると黒板を丹念に消す習慣がある.大学教授といえども例外ではない.日本の学校の先生の中には授業中に書きなぐった字をそのまま黒板に残して立ち去ってしまう人もいる.昔はクラスに当番がいたり,あるいは親切で気のきいた学生がいて,そのつど黒板を綺麗にふいてくれたものだが,最近はそんな習慣や美徳はお目にもかかれない.教室に入ると前の授業のあとが黒板いっぱいに書き残されていたりすると気がめいって,どうも授業に気のりがしなくなる,前の人の臭いが残っている公衆トイレに入った時の感じである.そんな時は黒板は使わないことにしている.やむを得ぬ時は,真ん中を必要なだけ消して書くことにしている.
私自身はどうかと言うと,別にアメリカの真似をするつもりはないが,黒板は丹念に消している.自分の拙い授業の跡をひとに見られるのがいやなので,黒板に書いたことは全部証拠いん滅のために消してしまうのである.
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