Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
Diphenylhydantoin(DPH)は1938年MerritとPutnam1)によって,てんかん治療剤として導入されて以来,抗てんかん薬の標準的薬剤として,今日でも広く用いられている。
しかるに,DPHをはじめ,抗てんかん薬の多くが,治療有効濃度の範囲が狭く,中毒濃度が治療濃度に接しているので中毒症状を起こしやすく1,2),臨床的に発作を防止する最少の投与量を決めるために,血漿中のDPHの濃度を指標とすることの有用性がBuchthal3),Kutt4)らにより示されてきた。
彼らの報告では,DPHの治療濃度は10〜20μg/ml(または10〜15μg/ml)であり,20μg/ml以上になると眼振,構音障害,運動失調,嗜眠,精神活動の低下を来し,60μg/ml以上になると意識障害を起こすことが報告されている。
本邦では,宮本5),間中6),武者7)らが,本邦患者のDPH濃度の測定を行ない,DPHの治療血漿濃度は,Buchthalら3)の報告とは必ずしも一致せず,むしろ低濃度であると報告している。また患者の個体差も認められる。
しかし,測定方法の困難性などから,今日ほとんどの医師は抗てんかん剤の血漿濃度測定を実施するに至っていない。また,抗てんかん剤の血漿濃度と臨床効果の関係を示すのに十分なデータが集積されている段階でもない。
最近,米国Syva社より開発された,酵素免疫測定法は,簡易正確,かつ感度も高く,血漿中DPH濃度の測定できる方法であることを認めた11)ので,同方法を用いて,てんかん患者101名の血漿DPH濃度を測定した。血漿DPHはBuchthalらの結果より著しく低値を示し,かつ幅広い濃度分布を示すことが明らかになったので,その結果を報告し,考察を加えた。
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.