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専門誌の巻頭言なるものは,その雑誌の性格なり,使命なりを示唆する,高度な提言や思想を表言するものであると思う。したがって,"編集同人"に名を連ねるわたくし如き者が,それを引き受けることは烏滸がましい限りといわねばならない。しかし,毎号の巻頭言に眼を通してみると,その内容はさまざまであって,ある場合には,筆者の当座の感想であったり,新しい論文や新刊書の紹介であったり,その人の専門分野の最近の業績の概観であったりするが,読んでみると結構面白いことに気付いた。そこで,わたくしもあえて雑文を書いて読者の眼を汚すことにしたが,その点お許し願いたい。
わたくしは,いつも"精神科医療"の現実に眼を向けているつもりである。そのなかのかなり重要な部分である,わが国の精神病院の実状は,とくにわたくしの関心事である。このような気持でいるときに,西丸先生の「自分の入れる病院を」という巻頭言は,わたくしに,さまざまな感慨を抱かせた。今日のわが国の病院のあり方からすれば,わが国の精神科医のうち,何人が喜んで入院するのであろうか。西丸先生の言っていられる通り,自分が入ってもよい病院はほとんどないといってもよい。西丸先生は,幸いにして御自身が入院してもよいところを見出されたが,一般の患者さんはどうなるのであろうか。わたくしは,今日の精神病院の病室(いわゆる大部屋)の様相には胸が痛む思いがする。院長も,開設者も,昔からの慣習によって,あのような病院の構造に不関となっているとみるほかない。入院している患者の住み心地を,わが身に移して,も一度建て直すか,改築する意欲は出てこないものであろうか。これは,病院勤務者の問題と同じく,医療の条件として,ゆるがせにすることのできない緊急のことがらであると思う。
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