Japanese
English
研究と報告
抑うつ焦燥感をきたした腎移植の1例
A Case of Depressive State with Initability after Renal Transplantation
堀田 直子
1
,
村山 英一
1
,
本多 邦雄
2
,
堀田 宣之
3
,
永田 卓生
4
Naoko Hotta
1
,
Eiichi Murayama
1
,
Kunio Honda
2
,
Nobuyuki Hotta
3
,
Takuo Nagata
4
1国立熊本病院神経科
2国立熊本病院内科
3熊本大学医学部付属体質医学研究所
4永田医院
1Dept. of Neuropsychiatry, National Kumamoto Hospital
2Dept. of Medicine, National Kumamoto Hospital
3Institute of Constitutional Medicine, Kumamoto University
4Nagata Clinic
pp.771-775
発行日 1976年7月15日
Published Date 1976/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202510
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
腎移植研究の歴史は,1902年,Ullmanの実験的腎移植の報告1)に始まる。1960年代に入り,抗免疫療法の開発,手術手技の確立,組織適合試験の進歩などにより,腎移植の成績は,毎年に格段の向上を示している2)。これを追うように,1966年頃から,腎移植者(recipient)と提供者(donor)とをめぐる精神力動学的な問題や,腎移植医療スタッフの心理的な問題など,精神医学面からの問題が提起されるようになった3〜5)。
最近,我々は腎移植術を受けた後,不安焦燥状態に陥った症例を経験した。本邦においては,いまだ腎移植適応症例の選択に際し,身体的側面の検索が重視されるあまりに,精神面からのアプローチがないがしろにされている印象を強く受けるが,本例もその非を免れない例である。人体臓器を移植するという倫理的問題の是非を回避して,早急に,外科的適応決定がなされる現況の中で,患者の精神的治療を無視する結果の不幸を指摘し,考察を述べたい。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.