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I.はじめに
この小論は一般科(内科小児科)を併設したごくありふれた診療所における精神科の診療活動の報告である。われわれが診療所を開設するにさいして一般科を併設した理由は,現在のわが国の医療環境においては精神科専門の診療所が経営的に成り立ちにくいという事情からばかりではない。われわれははじめから精神科専門の診療所を目ざさず,一般の身体疾患と精神疾患を差別しないで一緒に診療するという試みに積極的意義と利点を認めたのである。
このわれわれの考えは「精神疾患を他の身体疾患と同じillnessとして同一基盤で扱う5)」という英国の精神衛生法(The Mental Health Act)20)の基本精神を参考としたものであるが,この基本精神に沿って,英国において精神科の治療が精神疾患だけを集めて治療する精神病院から,一般病院の中の精神科へと移っていった動きとその成果5,25)を敷衍して考えるとき,われわれのごとく一般科を併設した精神科診療所の正当性と役割がわが国においてあらためて再認識されるべきであると考えた。また地域医療的役割を担う診療所は地域住民の医療に対するニードに答えることが要求されるという現実のなかで,彼らのニードが必ずしもわれわれ医療従事者側の専門職種にあてはまるものではなく,彼らが当面する体と心の病,およびその病に対する彼らの不安に対応することが要求されてくるという事情がある。したがって一般科を併設し彼らのニードに答えることは専門科の診療を地域において円滑に行うためにもむしろ必要であり,有利な方法であると判断された。
われわれは以上の基本的立場に立ち精神科の外来診療についてわれわれなりの工夫を試みて実行してきた。そしてわれわれはこのような診療活動を通じて精神科外来診療の手段と方法を探りたいと考えた。われわれの目的はまだとても達成されたとはいえないが,今回は昭和46年6月開設後約2年間の診療活動の報告を通して診療所の立場から精神科の外来診療を論じたい。
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