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著者はこの論文でimipramineの突然の投与中止後に禁断症状を呈した3症例の報告とこの現象の生化学的基盤について簡単に述べている。(症例Ⅰ)42歳男。うつ病でimipramineを450mgまで増量し3週間後に中止し,24時間後に急性不安,不穏,じっとしていられない状態となり,2時間後75mgの投与で1時間半後に症状は消失する。(症例Ⅱ)55歳男。躁うつ病でimipramineを3週間で375mgまで増量し,中止後24時間で急性不安,運動不穏,病棟を上がったり下りたりし,100mgの再投与で2時間以内に症状は消失する。(症例Ⅲ)40歳女。うつ病で300mgまで増量し,4週間で症状改善のため服薬中止し,24時間後に急性不安,運動不穏となり100mgの投与で2時間以内に症状は消失する。以上われわれの3例では投与中止後,急性不安,運動不穏,じっと坐っていることの不能などの症状がみられた。この臨床像は中枢神経系のdopamineの消耗,あるいはdopamineの過敏性によって起こるakathisiaと区別できない。このakathisia様症状群がimipramineの突然の投与中止後に出現し,再投与により消失することから,この薬物の禁断に関係しているといえる。akathisiaと運動過多状態が中枢性dopamineメカニズムで起こるので,この禁断現象も同様なメカニズムで起こるかもしれないとの可能性が考えられる。すでに抗dopamine作用を有する薬物は運動過多の症状を改善する証拠があるので,われわれの3例のakathisia様症状群は受容体側のdopamineの急性機能的消耗によると説明される。imipramineの3週間の投与でnorepinephrineとserotoninについて説明されていると同様なメカニズムでdopamineの蓄積を起こし,突然の禁断で受容体側の急なdopamineの減少を起こす。また,imipramineは脳内のdopamine合成を増加することはないという事実から,中枢神経系の利用可能なdopamineの機能的減少を起こし,このdopamineの機能的消耗あるいは新たに合成されたdopamineによるニューロンの過敏性がakathisia様症状群を起こすと考えられる。この禁断症状についてはShatanによって別の説明がなされている。それによるとimipramineには嗜癖性薬物の潜在力を有するので中止により禁断症状を起こすと説明している。
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