Japanese
English
研究と報告
計算てんかんの1例
A Case of Epilepsia Arithmetices
斎藤 惇
1
,
安斉 三郎
1
Atsushi Saito
1
,
Saburo Anzai
1
1横浜市立大学医学部神経科学教室
1Dept. of Neurology & Psychiatry, Yokohama City Univ. School of Med.
pp.127-134
発行日 1975年2月15日
Published Date 1975/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202273
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
知覚刺激が適当な条件の下で作用すると発作が誘発されるようなてんかんを反射てんかんと呼んでいる3)。その刺激となる知覚の種類により,種種の反射てんかんが報告されているが,知覚刺激が加えられた時にそれに伴う情動面の動きも誘発因子として当然考慮されねばならないであろう。Kretschmer, E. 1)によれば知覚には皮膚知覚,嗅覚,味覚など情動と深く結びついて知覚される情動親和性感覚と,視覚,聴覚など表象形成に強力に関与して情動との結びつきのうすい高等感覚とがあるという。しかしこの高等感覚といえども,認識,表象機能のごとき高等な精神活動の段階にいたってはじめて,内容と感情とは互いに独立して存在し得るのであって,光,色,音など直接的に感官的な性質の刺激の下では情動と深い関係を保っているという。事実,読書てんかん,音楽てんかん,聴原性てんかんと呼ばれる反射てんかんの中にも,悲しみ,快-不快,驚愕などの情動が関連して発作が出現しているように思われるものが少なくない。このように知覚と関連して情動面の刺激が加わり,発作が誘発される反射てんかんに対して,純粋な情動的,心理的体験および思考,注意の集中などの精神作用がてんかん発作を誘発する場合があるが,福山3),大沼4)らはこれらをもまた,反射てんかんの中に含めて考えている。1962年Ingvar, D. E. とNyman, G. E. 5)はこのような症例として,計算問題を解かせることにより意識消失発作が誘発されるてんかんの1例を報告しているが,われわれも計算問題を解くさいに意識消失発作が出現するめずらしい症例を経験したのでここに報告する。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.