古典紹介
Wilhelm Griesinger:Über psychische Reflexactionen: Mit einem Blick auf das Wesen der psychischen Krankheiten〔Archiv für physiologische Heilkunde, Bd. II;76, 1843〕(その2)
柴田 収一
1
Shuichi Shibata
1
1東京女子医科大学神経精神医学教室
1Dept. of Neuro-Psychiatry, Tokyo Women's Medical College
pp.303-314
発行日 1974年3月15日
Published Date 1974/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202158
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これまでは,感覚にまだなっていないか,あるいは朧ろ気にしかなっていない求心印象と筋緊張との関係,それから感覚そのものと運動との関係,最後に朧ろ気で全然またはほとんど意識されない表象と意向との関係を考察してきたが,これからいよいよ意識された表象の領域に踏み込むことになる。われわれは意識について以下の見解に全面的に賛成する。すなわち,意識とは諸表象に付け加わった何ものかであると考えるべきではなくて,意識は個々の表象の激しさ,強さ,明るさにこそ依存するものであり,静止状態の集団の中から意識された表象が際立つ関係になるという見解である。意識されない表象,半ば意識された(朧ろ気な)表象,意識された表象という区別は,この見解によれば本来単に量的な区別でしかないであろう。しかし先にも述べたとおり,ある点でこの量の相違が質の相異に転ずるのである。
先に筋緊張を考察した時に,求心性(感覚)印象の第一の独特性として,分散過程を挙げておいた。同様の過程は意識された表象の領域でも繰り返される。身体の全部位からの感知感覚と,意識されない求心性印象とが互いに離ればなれではいないのと同様に,表象も互いに離ればなれではいない。動揺しやすい,流動的とでもいえる表象のこの特性は,とりわけJ. Müllerがいかにも見事に解説したところであった。われわれはこの特性を,先に述べた諸現象との類似点に即してみていくとしよう。
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